千雨と蟻と小銃と 38-5
カップをソーサーに置く。アフタヌーンティーと洒落込んでいたが、どうにも落ち着かない。手ずから焼いたクッキーも会心の出来の筈が、味がぼやけている。
「はぁ~」
天ヶ崎千草は、盛大に溜め息を吐き、テーブルの上で脚を大きく動かし、身振り手振りよろしく喧しく話す白い蟻を見下ろす。誰も相手をしてくれないのか、暇つぶしのターゲットになってしまったようだ。やることなら山ほど有るはずだろうに、ついさっき見たと言う警官達のやり取りをそれはもう雄弁に語っている。それ処では無いはずだ。千草は呆れを包み隠さず、アナセスから視線を外した。