千雨と蟻と小銃と 37-8


 カッチカッチと振り子時計が正確に時を刻む音にカチャリと異音が交ざる。来客が退出した。聞き慣れたものだったが、酷く懐かしく感じる。
 学園長室にいるのは久方ぶりだ。たった数日だが、酷く離れていた気がする。ここで寝泊まりしていると言っても過言では無いから、余計に郷愁を感じさせるのだろう。やらなければいけないことは山ほどあるが、近衛近右衛門は肘掛けに手を置き、背を揺すると椅子に浅く座り直し、少し感傷的になった。
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千雨と蟻と小銃と 37-7


 カリコリと板書の音が響く。一時間目の授業は数学だった。テストも来週と迫り、教師はちょっと焦っているように神楽坂明日菜には見受けられた。
 筆記の手を止め、パラパラと教科書を捲る。テスト範囲と教えられたページまであと十ページ近くある。黒板横に張り付けてある時間割に視線を向けると、残り三時間。間に合うのだろうか。そんなことを心配してしまう。

千雨と蟻と小銃と 37-6


 ゴトンゴトンと規則的に列車が揺れる。スーツを着用した男がちらちらと視線を向けてきた。どこか国を間違えているのではないか、まだ夢の中ではないかと思っているのかも知れない。
 目立っている。もともとこの車両に乗り込んだ乗客はふたりだけなので、目立つという表現はおかしいのかも知れないが。ただそれでも真っ白なドレスに身をやつした異国の貴婦人がこんな朝早くから乗り込んでくるのは異質だった。

二百六十回更新をおこなって

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 新年度から妙に忙しい、オギカドカヤです。皆様はなにか環境が変わりましたでしょうか? 四月で一段落つくと思ったら、すぐに次の仕事、GW返上で仕事してました。五月病にかかりたい。かかったらかかったで死にそうですが……
 慣れるしかないのでしょうか。ただの愚痴ですね。

 最後に、コメント・拍手・ご意見・誤字報告ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

麻帆良外典 ~真・女神転生before~ 受胎編 第三ノⅤ



 第三章 潜入異界都市Ⅴ 違和感


千雨と蟻と小銃と 37-5


 金属片がすぐ顔の横を通り過ぎた。イステに噛み付いた狼は口腔内による爆発によって姿を消したようだ。銃身は原形を留めず、砕けたストックが乾いた音を立てて床を転がるのを、見て聞いた。
 まだ健在の可能性はある。アナセスは必死に足を動かす。しかし、たった数メートルがあまりにも遠い。闇で出来た狼がすぐそばに居た。ハッハッと荒いと息が聞こえたような気がする。

千雨と蟻と小銃と 37-4


(あかん)
 もし汗が流せるのなら、激しく滴せていただろ。
(あかん)
 死に直面している。
(どうしたらええんや)