千雨と蟻と小銃と 35-7


 長谷川千雨が舌打ちしながら席を立った。
 冷蔵庫から珈琲の入ったペットボトルを取り出し、それを呷る。甘ったるい苦みが口に広がった。
 頭の中では呪いと人間の戦いが映し出されている。強襲をなんとか必要最低限の被害で押さえた協会の魔法使い達が、仲間を助けながら応戦している。しかし、呪いにより変貌を遂げた生物は強かった。なにより多勢に無勢。人間の到来に肉を持った増悪が続々と集まってきている。
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千雨と蟻と小銃と 35-6


「マスター、協会の者達が空を飛んでいます」
「もうか!!」
 愚痴愚痴と不平不満を口にしながらも、困ったちゃんの後始末に向かおうと準備していたエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが声を荒げた。

千雨と蟻と小銃と 35-5


 コンコンと粛として鳴った。近衛近右衛門が電話を耳に当てたまま、扉を瞬息の間望む。
 丁度、会議も終わったところだ。入室を許可する前に「よろしく頼む」と伝えると電話を切り、「どうぞ」と笑顔で招き入れる。
「失礼します」

千雨と蟻と小銃と 35-4


「ふぅ~、お目覚めな……の?」
 自己改造を終えたアナセスは、真っ暗闇に包まれていることに驚愕した。
「たしか……あなせすはベッドの下でパワーアップしていたはずなの」
 時間はまだ夕方にもなっていない。遮光性の高いカーテンが敷かれているからと言ってここまで暗いなんて事もあり得ない。なによりここはとても窮屈で、伝わってくる感触は、毛羽立ちふわふわしている。