千雨と蟻と小銃と 32-6


 せっかく念入りに準備をした長谷川千雨だったが、誰とも出会うことなくキッチンに辿り着き、食事の準備をしていた。
 普段から食事は朝はパン、昼も菓子パン、夜は食堂、それに伴い不足する栄養素は栄養補助食品で補うと一切の食事の準備を放棄している千雨に、レパートリーなんてものは存在しない。当然、得意料理もない。簡単なモノなら作れるだろうがやらない。
スポンサーサイト

千雨と蟻と小銃と 32-5


 バチリと目蓋が開いた。遠近感を失い白一色に飲み込まれそうな感覚を覚える天井は寝起きにはきつく、その上どこからともなく入る日の光が眩しすぎて、目がくらんだ。
 こんな事はまれだ。疲労が取れていない。むしろ寝たことによってより顕著となって表れてしまっている。
 それならもう一度目を瞑り、二度寝すればいいのだが、それは出来そうになかった。

千雨と蟻と小銃と 32-4


 ベッドの上に腰掛けた近衛近右衛門がテーブルに置かれたノートパソコンに向かって、「では、なにか変化があったらまた連絡してくれ」と言いネット回線を切った。
(まずいのう。まず過ぎるのう……)
 そう呟き、用心のためにノートパソコンの電源も落とす。用心以上に魔力の補助がない今の近右衛門には画面を凝視するだけで年相応の疲労が眼に来ていた。ここ数日の激務により体力を消耗しきっているというのもあるが。そんな近右衛門が目眩にも似た感覚を覚え、目頭をきつく押さえ、ため息をついた。

千雨と蟻と小銃と 32-3


「ちょっとあんたなんで避けるのよ!?」
 五回も回避すると流石に神楽坂明日菜も怪しいと思い出したのだろうムキになり始めた。彼女は、犬上小太郎が言ったことを本当だと思い始めている。頭の中から聞いた天ヶ崎千草死亡説はさっぱり綺麗に消えていた。
「なんなんですか、あなたは、ちょっと止めてください。お願いです。誰かこの人を止めてください!!」

千雨と蟻と小銃と 32-2


「ウチも行かなあきまへんか?」
「往生際が悪いぞ。それに分からねーってその姿だったら」
 関東魔法協会の魔法使いに見つからないよう気を配りながら結界を抜け出た長谷川千雨は、後ろを着いてくる天ヶ崎千草を見た。
 そこにスーツ姿の目つきの悪い女性はいない。年の頃は千雨と変わらない、ワンピースを着たボブカットのかわいらしい少女が一人いるだけだった。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。