千雨と蟻と小銃と 30-5


 夜が浮き足立っているように感じる。人影はまばらだというのにそんな印象を持ってしまう。むしろまばらだからこそ、そう言う印象を持ってしまうのだ。
 それはあからさまに現場写真を撮るぞ、と言ったカメラが目につくからだろう。そんな姿を見て小島は陰鬱な気持ちになった。
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千雨と蟻と小銃と 30-4


 パソコンを抱えたまま見上げたアルベール・カモミールから近衛木乃香に視線を移すと、彼女はまだはしごに昇ったままの状態で頭を出していた。
 それが少し不気味に感じられ、
「ねぇ、このかも昇ってきたらどう?」
 と会話の流れを切ってしまうことになるが、神楽坂明日菜が開口した。

千雨と蟻と小銃と 30-3


 神楽坂明日菜は間近に控えた中間テストに備えて勉強机に向かっている。ただ、三十分と集中力が続かず、今では椅子に座ることが目的となっていた。
 普段なら新聞の朝刊配達に備えてそろそろ寝る準備をしているのだが、麻帆良で起きている殺人事件で休みを取らされている。生活費を自分で稼ぐ明日菜には手痛い休みであった。
 それならと勉学に励もうとしたのだが続かない。集中できない。今夜も事件が起こるのではないかと気になっているからだろう、と明日菜は結論づけた。

千雨と蟻と小銃と 30-2


 背後から聞える説明を耳にしながら、長谷川千雨はドアの前に立った。
 光取りのすりガラスに二名の人影が映る。大きいのと小さいの。話し声は聞えない。気配から映らない場所にもう一名いることを千雨は関知した。
(那波か……)
 長身の人影の立ち姿からそう判断する。
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