千雨と蟻と小銃と 27-2


 ピリピリとした空気は臨界点を突破して肌で弾けているような感じを覚えさせる。五分ほど遅れて開始した捜査会議は、開始早々これまでに体験したことのない緊張感を要求していたが、小島はそれから一線を引いていた。
「……指名、横田貴文、四十歳。麻帆良芸大附属中学校、英語教員、出身地東京都練馬、血液型A型。死亡推定時刻は五月十五日午後八時から九時の間。現住所は埼玉県麻帆良市……」
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千雨と蟻と小銃と 27-1


 一段落がついたのは日が昇り始めたころだった。しかし朝日を望む事は出来ない。昨夜未明から雨を降らせている黒く厚い雲が日の光を遮断しているからだ。
 七時から捜査会議があるということで、火村は一仕事を終えた帰りに二十四時間チェーンの飲食店で朝食を済ませて、麻帆良警察署に戻ってきた。
 視界を確保する為、忙しなく動くワイパーの先、署の周りにはちらほらと報道陣の姿が見受けられ、どこか浮き足立っているように感じる。

百六十回更新をおこなって

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 『千雨と蟻と小銃と』、百六十回目の更新となりました。オギカド カヤです。
 今年のゴールデンウィークは少しでしたが休みが取れて、友人たちとバーベキューをしました。
 じゃんけんで負けて帰りの運転手役をやらされたので酒は飲めませんでしたが、いい休みになりました。
 コメント・拍手・ご意見・誤字報告ありがとうございました。
 改訂作業ですが、千雨と蟻と小銃とは一応、第一部までを予定しており、初期のころと文体が変わっていますので、これからも代わる可能性があり、終了後にまとめてやるつもりです。
 指摘していただければその箇所はその都度修正させていただきます。これからもよろしくお願いします。

麻帆良外典 ~真・女神転生before~ 受胎編 第二章ノⅡ



 第二章 学生寮変貌Ⅱ 始動

千雨と蟻と小銃と 26-11


 ルームメイトは友達のところに遊びに行っている。朝倉和美は誰にも邪魔されず、肩に携帯電話を挟みながらパソコンに向かっていた。当然ながら通話中である。相手は所属する報道部の先輩で、和美は渋面を作って、口を動かしていた。
「先輩、この事件絶対におかしいですから、取材なんて止めてくださいよ」
 和美はこの事件の本質をしる数少ない一般人だ。多少なりとも危険な目にもあっている。電話の相手はなにもしらない一般人で、そんな彼女を止めることの出来る言葉を和美は用意できなかった。

千雨と蟻と小銃と 26-10


 階下から笑い声が聞こえてきた。長谷川千雨は視線を一瞬だけそちらに向けてから、乾いた泥と血で薄汚れたアルベール・カモミールに視線を戻し、視界の端に映るネギ・スプリングフィールドへと焦点を合わせた。
 ネギは呼吸することを忘れたようにグッと唇を結んで、カモの言葉を聞き漏らさないよう意識を集中させている。そんな視線を向けられるカモは千雨たち見あげたままジッとして口を開かない。