千雨と蟻と小銃と 26-9


「ほらよ」
 長谷川千雨は、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルを彼女のミドルネームどおり子猫のように首根っこを掴むと、従者に渡す。エヴァンジェリンが吐く寝息には多量の酒気が含まれている。絡繰茶々丸にそれを感知する機能があったのか、少しだけ表情を変えた。
『ホント、よく出来ているよな』
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恋情奇譚 07


(ネアネのスタンスを知らなきゃね)
 蓮城志乃はそんなことを考えながら麻帆良学園に到着した。
 ネアネ・スプリングフィールドかこれからどう動くのか、志乃にとっての最重要案件である。彼女の行動ひとつで計画の変更をリアルタイムで行なわなければならない。彼女はネギ・スプリングフィールドの姉と言う立場にある。弟は姉のアドバイスをうけるだろうから。

千雨と蟻と小銃と 26-8


 そこに居るのは綾瀬夕映の知る宮崎のどかではなかった。その立ち姿からもすぐに理解した。昨夜もそうだったが、なにかの影から脅えた様に覗く、そんな気弱な態度を取る事が多いのどかだったが、今はそれがなかった。それどころか決意が滲み出ている。
 そんな真摯な姿に夕映は息を飲み込んだ。
 同じ部活に所属している近衛木乃香も、夕映と同じ様なことを感じているのか、のどかの変化に目を見開き動きを止めている。

千雨と蟻と小銃と 26-7


 通常の三人部屋は雪広あやかたちの部屋のように広くはない。この部屋は二段ベッドとロフトを用いての三人部屋。そんな643号室で、綾瀬夕映は教師が使うような指し棒を模した杖を呪文と共に振っていた。
「火よ灯れ!!」
 ピタッと止まる腕、ポーズだけは決まっていてなにか起こりそうだった。しかし、一秒、二秒と変化を待ちながら杖の先を凝視していても、何も変化はない。力なく降ろされた腕に落胆の色が見える。

千雨と蟻と小銃と 26-6


 街そのものが静まり返っていた。時刻が午後九時半を回っていて、麻帆良の夜が元々静かだという事もあるにしても、今日は一段と静まり返っている。それはあたかも、なにかから身を隠し、息を殺しているかのようだ。
 ネギ・スプリングフィールドは顎を上げ、視線を街から空へと映すと、月すらも薄雲で覆われその姿を隠そうとしているように思えた。

千雨と蟻と小銃と 26-5


 声を押し殺して涙を流すエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。いきなり泣き出した彼女に長谷川千雨は困惑した。彼女が断片的に語った言葉から思考ルートを推測しつつ、今にも崩れ落ちそうなエヴァンジェリンを落ち着かせなければならない。
 言葉を繰り出そうとするが理由が分からないため、うかつな事は言えない。適当な言葉では事態の悪化は必至だった。共感して頷いておくという常套手段もあるが、そんな程度でどうこうできる問題なら、目の前の吸血鬼がこんな姿を晒すことはありえないだろう。
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