千雨と蟻と小銃と 25-8


 脳裡には近衛近右衛門の声が響いていた。
[――お主たちはどうする?]
 食堂内は静寂に包まれている。他のメンバーの脳裡にもまったく同じ物が流れていた。だから誰一人言葉を発しない。ただ視線は千雨に向けていた。彼女がどうするのか、テレジア・フェルディナンドも天ヶ崎千草も彼女の口から出る言葉に耳を傾けている。
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千雨と蟻と小銃と 25-7


 アナセスは病室の蛍光灯の中から外の様子を覗き見していた。外が若干白いがそんなものは関係なかった。
 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと近衛近右衛門もアナセスを排除できたとは思っていないのだろう。たとえ彼女に情報が漏れたとしても誰に伝わるか分かっているから、そんな彼らにアナセスのほうが気を使った。

千雨と蟻と小銃と 25-6


 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは病院のロビーにいた。
 居心地悪そうにしかめっ面をしている。麻帆良総合病院、近衛近右衛門はここに運ばれ入院していた。
 エヴァンジェリンの視線が壁に掛けている時計にいく、これで何度目だろう。三分置きに時計を確認していた。それを繰り返すたびにイライラが積もっていく。かなりの時間待たされている。アポも取らずに来たので仕方がないといえば仕方がないのだが、待たせすぎだ。と思った。

千雨と蟻と小銃と 25-5


 長谷川千雨たちは天ヶ崎千草の部屋から食堂に場を移した。
 動物型式神が大挙して、一人当たりの占有面積が狭くなり、居心地が著しく悪かったからだ。
 それならと千草が式を消そうとしたが、アンジェリカには興味がなかったのか遊びだしたのを見て、千雨が引く形を取り、ここに移動したのだ。
 呪実が紅茶を入れたティーカップを千雨の前に置く。千雨はそれに不純物が入ってないか、ジーッと注意深く観察してから口をつけた。