恋情奇譚 05


「あー、目を覚まして最初に見たのが男かぁ、最悪の目覚めだね」
 蓮城志乃の目に飛び込んできたのは、ちょこんと椅子に腰掛けるネギ・スプリングフィールドだった。
 あんまりにもな言い分だったがネギは純粋に志乃が起きた事に安心していたのか、笑みを浮かべている。
 志乃はその顔を見ながらもぞもぞと上半身を起した。
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千雨と蟻と小銃と 23-5


 長谷川千雨の部屋では見ていられないのだろう宮崎のどかが手で顔を覆っていた。千雨が作り出した魔法陣の中には古菲が力なく横たわっている姿が映し出されている。
 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは心底詰まらなそうに見ている。長瀬楓は表情から心情は読めない。組む腕も力が入っているといった様子はない。龍宮真名はどちらかと言うと映し出された映像よりも千雨の様子を観察している。

千雨と蟻と小銃と 23-4


 ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマンの攻撃は止まらない。
 胸より少し上、顎まで上げないそんな所で構えられた拳から打ち出されるジャブには、距離と言うものが存在せず軌道上のものを容赦なく破壊していく。
 舞台の座席が瓦礫とかし撒き散らされる中、ネギ・スプリングフィールドは全面に障壁を張りならがやり過す。しかし障壁はそれ程持たない。二発、三発とジャブを受けると破られてしまう。次の障壁を張る隙を古菲との修行で身につけた付け焼刃な拳法でなんとか致命傷だけは避けていた。

千雨と蟻と小銃と 23-3


 うやむやのまま時が過ぎ、重い空気のままの長谷川千雨の部屋、聞えてくるのはドライヤーのブロー音だけだった。
 この場には主である千雨以外に、龍宮真名、長瀬楓、宮崎のどかもいるが誰も言葉を発しない。
 洗面所にはエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルがいる。彼女はシャワーを浴び終わり、髪を乾かしていた。

千雨と蟻と小銃と 23-2


 世界樹下ステージまで五十メートル。厚い雲に覆われ辺りは真っ暗だった。街灯はあるが疎らで雨も降っており視界は悪い。
 ネギ・スプリングフィールドは植え込みの間から周囲に目を凝らす。この辺りは学校や商店、居住区は無く世界中を中心として公園のような感じになっている。
 人気はない。時刻も時刻だが、雨もあって足を遠ざけるには十分だった。こんな時にこんな所にいる物好きは、ネギ一行以外居なかった。