千雨と蟻と小銃と 23-1


 三人は暗闇の中でなにか話すでもなく、佇んでいた。
 転移した場所は長谷川千雨の部屋。雷雨がもたらす稲光がたまに室内を照らす。他に灯りになりそうなのはコンセントについたスイッチぐらいだろう、オレンジ色に壁を淡く照らしている。
 それでも今ここにいる面子で光がないと不自由だと感じるのは宮崎のどか位である。残りの長瀬楓は忍。この程度の暗闇では行動に支障はなかった。
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千雨と蟻と小銃と 22-11


 大浴場には湯が溜まる音だけが響いている。
 広い大浴場に長瀬楓と宮崎のどかのふたりだけだった。手術の成功を祈るように佇み、ジッと脱衣所の方を見ている。長谷川千雨が記憶処理を終えるのを固唾を呑んで待っていた。
 立ち込める湯気と熱気。のどかは流れ出る汗を拭いながら、隣を見る。楓はいつもの飄々とした感じはないが、それでも表情仕草共に変わらない。

千雨と蟻と小銃と 22-10


 犬上小太郎と古菲は、騒がしい寮内でネギ・スプリングフィールドを探していた。
 すぐネギを追えればよかったのだが、まず小太郎に問題が発生した。彼はここに来た時、犬に偽装していたそのため着ている物はなし、今着ている服も村上夏美からの借り物だった。当然として靴もない。ネギを追いかけて玄関まで行ったのはよかったがそこで立ち往生することとなったのだ。すぐさま室内に呼びかけて、少し小さい夏美の靴を借りて外に出たのだが、ネギの姿はなかった。

千雨と蟻と小銃と 22-9


 急激な魔力の高まりを感じ、佐倉愛衣は足早に大浴場に向った。大勢の寮生が異変を感じ右往左往している。その間を擦り抜けるようにして先を急ぐ。
「佐倉さん」
 手に袋を持ったこれと言って目立つものの無い少女が、駆け寄ってくる愛衣を見て、手を振った。
 愛衣は周囲を確認する。うかつなことは喋れない状況だ。