千雨と蟻と小銃と 18-4


『……長谷川さん』
 長谷川千雨は手を止めた。
 外部で呼んでいる声が聞こえたからだ。彼女の目の前には展開された魔法陣がこれでもかと埋め尽くされている。
「アナセスどれくらい時間たった?」
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千雨と蟻と小銃と 18-3


「あ~、なにすりゃいいんだ」
 これからおよそ二十二時間をどう過すか問題だった。過去を振り返り延々と愚痴るのは精神に良くない。この時間をどう過ごすか前向きに考える必要があった。
 なにをすべきか。
 長谷川千雨は携帯電話を取り出すと画面を見るが、アンテナは立っておらず圏外を表示していた。

千雨と蟻と小銃と 18-2


 絡繰茶々丸に先導される形で、長谷川千雨は塔に絡みつく階段を下りていた。
 右手で外壁を軽く撫でたり、叩いたりしている。
 十分すぎるほど幅を取られた階段を支える外壁は、一枚の岩を加工したかの様な滑らかさで、境目が見えない。
「これってだれが造ったんだ」

千雨と蟻と小銃と 18-1


「なんでこうなったんだ?」
 長谷川千雨の呟きは誰に届く事なく泡のように消えた。彼女は椅子に浅くかけ、天を仰いでいる。見えるのは無機質な白い天井だけだった。
 彼女は監禁されていた。監禁したのはエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ。他にネギ・スプリングフィールドもこの部屋ではないが近くにいる。
 ハァ~と溜息を吐くと、こうなるまでの今日の出来事が脳裏に映し出された。